芹沢鴨の異世界日記 第二十五話
王都グランベルに帰還した俺たちは、まず冒険者ギルドへと向かった。ギルドの受付で、俺は懐から取り出したグリフォンの羽と魔石をカウンターに置いた。
「こ、これは……グリフォンの羽と魔石! まさか、本当に手に入れてきたんですか!?」
受付の女性は、驚きと興奮で顔を紅潮させた。グリフォン討伐の依頼は掲示されていなかったため、彼女は俺たちがグリフォンを仕留めてくるとは夢にも思っていなかったのだろう。
「ふん。必要なものがあったから、狩ってきただけだ」
俺は、そう言って不敵に笑った。
受付の女性は震える手で魔石を受け取ると、すぐに鑑定士を呼んだ。鑑定を終えた鑑定士は、その場で平伏する勢いで俺たちに恭順の意を示した。
「ま、まさか、これほど完璧な状態でグリフォンを討伐なされるとは……! これほどの魔石は、めったに市場に出回りません! これだけの報酬があれば、一生遊んで暮らせるほどです!」
鑑定士の言葉に、アルベルトが感嘆の声を上げた。
「すげえな、芹沢! 俺たち、ついに大金持ちだぜ!」
だが、俺の目的は、金ではない。俺の目的は、俺の剣を、どこまで高められるのか、試すことだ。
俺たちは、冒険者ギルドを後にし、賢者の塔へと向かった。
賢者の塔の扉を開けると、そこには、相変わらず静寂が満ちていた。俺たちは、奥の研究室へと向かった。
老賢者は、俺たちの姿を見ると、書物から目を離し、不敵な笑みを浮かべた。
「ほう、戻ってきたか。グリフォンの羽は、手に入れたかね?」
俺は、老賢者の言葉に、黙ってグリフォンの羽を差し出した。
老賢者は、その羽を受け取ると、まるで宝石でも扱うかのように、丁寧にそれを眺めた。
「……見事だ。まさか、お前たち二人だけで、グリフォンを討伐してくるとはな。私の予想を遥かに上回った」
老賢者は、そう言って、俺の目を、じっと見つめた。
「さて。これで、お前が求めるスキルポーションは作れる。お前は、どんなスキルを強化したい?」
老賢者の問いに、俺は迷うことなく答えた。
「**『スキル作成』**だ」
俺の言葉に、老賢者は、わずかに眉をひそめた。
「『スキル作成』……? それは、誰もが持っているものではない。それどころか、私ですら、そのスキルの存在を、書物でしか見たことがない」
「ふん。だからこそ、強化する必要がある。俺のスキルは、まだまだ、未熟だ」
俺は、そう言って、老賢者を睨みつけた。
老賢者は、俺の言葉に、不敵な笑みを浮かべた。
「面白い。よかろう。お前の言う通り、その『スキル作成』は、非常に稀有なスキルだ。そのスキルを強化すれば、お前は、この世界のどんな魔物よりも、どんな賢者よりも、強くなれるかもしれん」
老賢者は、そう言って、グリフォンの羽を、巨大なフラスコの中へと投げ入れた。
グリフォンの羽は、フラスコの中の液体に触れると、たちまち溶け出し、液体は、黄金色に輝き始めた。
「……これが、スキルポーションか」
アルベルトが、息をのんだ。
「さあ、飲め。お前のスキルは、このポーションによって、新たな高みに達するだろう」
老賢者は、そう言って、黄金色に輝く液体を、一つの瓶に注ぎ、俺に差し出した。
俺は、その瓶を受け取ると、迷うことなく、一気に飲み干した。
甘く、まろやかな味が、俺の喉を通り過ぎていく。
そして、俺の身体の中を、熱い何かが駆け巡る。
「うおおおおおおおお!」
俺は、叫んだ。
俺の心臓に刻まれた『スキル作成』のスキルが、まるで、新しい命を吹き込まれたかのように、光を放ち始めた。
《スキル『スキル作成』が、進化しました。》 《スキル作成(レベル3)に上昇。》 《新たなスキルを作成しますか?》
「……作成しろ」
俺は、そう念じた。
《スキル作成:『神速』、完了。》
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