芹沢鴨の異世界日記 第二十八話
冒険者ギルドの掲示板を、俺とアルベルトは二人で眺めていた。俺の隣で、アルベルトが真剣な表情で依頼書を吟味している。
「なあ、芹沢。次の依頼は、どうする? お前の新しいスキルを試すなら、やっぱり強力な魔物討伐がいいか?」
アルベルトの言葉に、俺は首を横に振った。
「いや。しばらくは、強力な魔物との戦いは避ける」
「え? なんでだよ! せっかく強くなったのに……」
「ふん。俺は、まだまだ未熟だ。それに……」
俺は、そう言って、アルベルトの顔を見た。
「俺は、お前との連携を、もっと高めたい」
俺の言葉に、アルベルトは、一瞬、呆然とした表情を浮かべたが、すぐに、嬉しそうな笑顔を見せた。
「おう! わかったぜ、芹沢! じゃあ、連携を深めるのに最適な依頼を探そう!」
俺たちは、掲示板を隅々まで見渡した。そして、一つの依頼書が、俺たちの目に留まった。
『古城の魔物討伐』。
依頼内容は、王都の近くにある廃墟となった古城に巣食う魔物の討伐だ。だが、その依頼には、一つだけ、奇妙な注意書きがあった。
「……『古城の魔物たちは、知能が高く、連携して襲ってくる』……か」
アルベルトが、その注意書きを読み上げた。
「これは、俺たちの連携を試すのに、もってこいの依頼だ」
俺は、そう言って、その依頼書を掴み取った。
「よし、決まりだな。古城に行くぞ、アルベルト」
「おう!」
俺たちは、冒険者ギルドで依頼を受け、古城へと向かった。
古城は、王都から馬車で一時間ほどの場所にあった。城壁は、蔦に覆われ、まるで巨大な森の一部になっているかのようだ。
城の内部に入ると、そこは、まるで時間が止まったかのような、静寂に包まれていた。
「……妙な気配がするな」
俺は、警戒しながら、剣を抜いた。
「ああ。魔物の気配が、ほとんどない。だが、逆にそれが不気味だ」
アルベルトも、警戒しながら、腰の杖を握りしめた。
俺たちは、城の奥へと進んだ。
やがて、俺たちは、広大な広間に辿り着いた。広間の中央には、巨大なチェス盤が置かれており、その上には、無数の骸骨が、チェスの駒のように並んでいる。
「これは……」
俺は、その光景に、思わず息をのんだ。
その時、骸骨たちが、一斉に動き出した。
「グルルルル……!」
骸骨たちは、チェスの駒のように、正確な動きで俺たちに向かってきた。
「くそっ、スケルトンの群れか!」
アルベルトが、叫んだ。
俺は、剣を構え、スケルトンたちに向かって駆け出した。
「『神速』……!」
俺は、神速スキルを発動させ、スケルトンたちの群れの中へと飛び込んだ。
俺の剣は、スケルトンたちの頭蓋骨を正確に捉え、次々と破壊していく。
だが、スケルトンたちは、ただの群れではなかった。
スケルトンたちは、まるで、誰かの指示を受けているかのように、俺の攻撃を読んで、連携して攻撃してきた。
「くそっ、知能が高いだと……?」
俺は、舌打ちをした。
その時、一匹のスケルトンが、俺の死角から、剣で襲いかかってきた。
「っ……!」
俺は、その一撃を、なんとかかわしたが、その隙に、別のスケルトンが、俺の足を狙って、攻撃してきた。
「芹沢! 危ない!」
アルベルトが、叫んだ。
俺は、スケルトンたちの連携によって、動きを封じられてしまった。
このままでは、ジリ貧だ。
俺は、そう確信した。
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