芹沢鴨の異世界日記 第三十話
バラバラになったスケルトンたちの身体の中心から放たれた紫色の光は、まるで生きているかのように、不気味な形を保ちながら宙を舞っていた。その光の塊は、俺たちがこれまでに遭遇したどんな魔物とも違う、禍々しい気配を放っている。
「あれが、このスケルトンたちを動かしていた核……!」
アルベルトが、叫んだ。
俺は、自分の身体から力を絞り出すように、剣を構え直した。だが、『怒り』のスキルの反動で、全身の筋肉は悲鳴を上げている。このままでは、あの光の塊に、どうにか一撃を当てることすら難しい。
「くそっ、こんなところで……!」
俺が悔しさに歯を食いしばった、その時だった。
アルベルトが、一歩前へ出た。
「芹沢! 俺が時間を稼ぐ! お前は、回復に専念してくれ!」
「馬鹿を言うな! お前に、あれがどうにかできる相手か!?」
俺は、叫んだ。だが、アルベルトの顔には、迷いはなかった。
「一人じゃないんだ。俺たちなら、できる!」
アルベルトは、そう叫ぶと、俺に向かって、自分の魔力を込めた光を放った。
《スキル『ヒーリング』が、対象に付与されました。》
俺の身体に、アルベルトの『ヒーリング』の光が降り注ぐ。それは、激しい痛みを和らげ、少しだけ、俺に活力を与えてくれた。
「感謝する、アルベルト……!」
俺は、そう言って、再び剣を握りしめた。
アルベルトは、その隙に、紫色の光の塊に向かって、次々と魔法を放った。
「『フレイムボルト』! 『フレイムボルト』!」
火の玉は、光の塊に直撃するが、光は一瞬揺れるだけで、ダメージを受けているようには見えない。
「くそっ、効かないのか……!?」
アルベルトが、焦りの声を上げる。
その時、紫色の光の塊が、巨大な鎌のような形に変化し、アルベルトに向かって、一気に飛びかかってきた。
「アルベルト! 危ない!」
俺は、叫んだ。だが、身体が動かない。
俺は、ただ、その光景を、見ていることしかできなかった。
だが、アルベルトは、諦めていなかった。
アルベルトは、自身の身を盾に、俺の前に立ちはだかった。その姿は、まるで嘆きの騎士との戦いを、再現しているかのようだった。
「俺は……お前を、守る!」
アルベルトは、そう叫ぶと、自身の身体から、淡い光を放った。
それは、アルベルトの『ヒーリング』の光だ。その光は、紫色の光の塊とぶつかり合い、一瞬、拮抗する。
「……なるほど。光と闇……か」
俺は、この戦いの本質を、この一瞬で理解した。
俺の剣は、物理的な攻撃だ。それは、実体を持たない、あの光の塊には、完全に有効ではない。
だが、アルベルトの魔法は、光の力だ。それは、あの光の塊と、同じように、干渉することができる。
「アルベルト! そのまま、光を放ち続けろ!」
俺は、そう叫んだ。
アルベルトは、俺の言葉を信じて、光を放ち続けた。
俺は、剣を構えた。そして、俺の心臓に刻まれた、新たなスキルに、意識を集中させた。
《スキル作成:『光剣』を作成しますか?》
俺は、そう念じた。
「……作成しろ!」
《スキル『スキル作成』が、アルベルトの魔力に触れたことで、新たなスキルを創造します。》 《スキル作成:『光剣』、完了。》
スキル: 光剣(レベル1) 効果: 剣に光の魔力を纏わせ、霊体や光の魔物にも有効な攻撃を可能にする。
俺の剣に、アルベルトの『ヒーリング』の光が、まるで吸い込まれるかのように、纏わりついた。
俺の剣は、光を放ち、その刃は、これまでとは全く違う、神聖な輝きを放っている。
「……これが、俺たちの連携だ」
俺は、そう呟くと、紫色の光の塊に向かって、駆け出した。
登場人物:
- 芹沢鴨:主人公。新撰組局長。新たな敵の核に苦戦しつつも、アルベルトとの連携で新たなスキルを獲得する。
- アルベルト:冒険者。芹沢鴨の相棒。芹沢の負傷中に身を挺して敵の注意を引き、新たなスキルの獲得を助ける。 スキル:
- 芹沢鴨:スキル作成(レベル3)、居合(レベル1)、剣気(レベル1)、剣術融合(レベル2)、怒り(レベル1)、飛翔(レベル1)、空翔剣(レベル1)、神速(レベル1)、光剣(レベル1)
- アルベルト:ヒーリング(レベル2)、フレイムボルト 行動履歴:
- スケルトンたちの核である紫色の光の塊が実体を持たない敵であることが判明する。
- 疲弊した芹沢の代わりにアルベルトが立ち向かい、自身のヒーリングスキルで芹沢を回復させる。
- アルベルトの光魔法と敵の闇の力の干渉から、芹沢は新たな戦術を思いつく。
- 芹沢鴨はアルベルトの魔力を借りて、新たなスキル『光剣』を作成する。 ストーリー:
- アルベルトが、戦闘における単なる援護役から、芹沢の成長に不可欠な存在へと昇華する。
- 芹沢鴨が、アルベルトの力を借りて新たなスキルを獲得することで、真の仲間としての絆が描かれる。
- 敵の特性を理解し、新たなスキルで対抗するという、戦略的な戦闘が展開される。
- 物語は、ついに古城の魔物討伐の最終局面に突入する。
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