芹沢鴨の異世界日記 第三十三話


アルベルトから魔王討伐の願いを聞かされた俺は、その言葉に、胸の中で新たな炎が灯るのを感じた。それは、かつて新撰組局長として、京の街を守ろうと燃やした、あの熱い魂と同じものだった。

「……魔王、か。面白そうだ」

俺は、酒を一口煽ると、不敵な笑みを浮かべた。

「おいおい、芹沢。魔王だぞ? この世界の、どんな魔物よりも強い、絶対的な存在だ。そんな奴を、面白いなんて……」

アルベルトが、呆れたような声で言った。

「ふん。強いからこそ、面白いのだろうが。俺の剣が、どこまで通用するのか、試してみたい」

俺は、そう言って、酒を飲み干した。

だが、魔王を倒すためには、俺たちの力だけでは、到底足りない。

「アルベルト。魔王の情報を、もっと知ることはできないのか?」

俺の問いに、アルベルトは首を横に振った。

「魔王の情報は、ほとんど残っていないんだ。ただ、魔王を倒すためには、この世界のどこかに眠っているという、**『伝説の剣』**が必要だ、という話だけは、聞いたことがある」

「伝説の剣……?」

俺は、その言葉に、胸が高鳴るのを感じた。

「ああ。その剣は、魔王に唯一対抗できる、聖なる剣だと言われている。だが、その剣が、どこにあるのかは、誰も知らない。ただ、一つだけ、手がかりがある」

「……話せ」

「その剣は、この世界の三大ダンジョンの一つ、**『古の森の迷宮』**の最深部に眠っている、という噂だ」

三大ダンジョン。

それは、この世界でも、最も危険なダンジョンだと言われている。

「……なるほど。古の森の迷宮、か」

俺は、そう呟くと、再び、酒を注文した。

「おい、芹沢。まさか、行く気か!? 古の森の迷宮は、嘆きの洞窟よりも、遥かに危険だぞ! 一人で、なんて……」

アルベルトが、俺の考えを察し、焦りの声を上げる。

「馬鹿を言うな、アルベルト。俺は、もう一人ではない」

俺は、そう言って、アルベルトの肩を叩いた。

「俺たちは、魔王を倒す。そのために、俺は、その伝説の剣とやらを手に入れてやる」

「……芹沢……!」

アルベルトは、俺の言葉に、感激したような表情を見せた。

俺たちは、酒場を後にした。

翌朝、俺たちは、冒険者ギルドへと向かった。

ギルドの掲示板には、古の森の迷宮に関する依頼は、一つもなかった。三大ダンジョンともなると、依頼として掲示されること自体が稀なのだ。

「仕方ない。自力で、古の森の迷宮を探すしかないな」

俺は、そう言って、アルベルトと共に、王都を後にした。

俺たちの新たな旅が、今、始まる。