芹沢鴨の異世界日記 第三十六話
迷宮の主は、迷宮そのものと一体化した巨大な生命体だ。物理的な攻撃は通用するが、無限に湧き出てくる木の根を相手にしていては、いずれ俺たちの体力は尽きてしまう。俺は、この迷宮を、根源から断ち切る力が必要だと悟った。
「『スキル作成』……**『森羅万象』**を作成しますか?」
俺は、そう念じた。
《警告。スキルの作成には、莫大な魔力と、新たな素材が必要です。》
「……くそっ、やはりそうか……!」
俺は、舌打ちをした。
その時、アルベルトが、俺の背後から、俺の肩に手を置いた。
「芹沢。俺の魔力を使え!」
「馬鹿を言うな! お前の魔力では、足りん!」
「いいや、足りる! 俺は、お前を信じている!」
アルベルトは、そう叫ぶと、自分の杖を、俺の剣に重ねた。
俺の剣に、アルベルトの魔力が、まるで滝のように、流れ込んでくる。
《スキル『スキル作成』が、アルベルトの魔力に触れたことで、**『森羅万象』**のスキルを創造します。》
《スキル作成:『森羅万象』、完了。》
スキル: 森羅万象(レベル1) 効果: 自然の理を操り、森の魔力を破壊する。
俺の剣は、まるで生きているかのように、光を放ち始めた。その光は、これまで俺が作った、どんなスキルよりも、強く、そして、神聖な輝きを放っている。
「……これが、俺たちの力だ」
俺は、そう呟くと、迷宮の入り口を塞いでいる、巨大な木の根に向かって、剣を構えた。
「『森羅万象』……一の太刀!」
俺は、剣を振り抜いた。
俺の剣から放たれた光は、木の根を、まるで紙切れのように、切り裂いていく。
そして、その光は、木の根を切り裂くだけでなく、迷宮全体に広がっていった。
俺たちが今いる古の森全体が、一瞬、光に包まれた。
そして、光が消えると、森は、元の静寂を取り戻していた。
「……終わったのか……?」
アルベルトが、呆然とした表情で俺を見た。
「ああ。終わった。迷宮の主は、もう、この森にはいない」
俺は、そう言って、力なく微笑んだ。
俺は、迷宮の入り口へと向かった。そこには、巨大な木の根が、まるで、俺たちを歓迎しているかのように、二つに割れていた。
俺たちは、その入り口を通り、迷宮の奥へと足を踏み入れた。
迷宮の中は、暗く、湿った空気が漂っている。そして、俺たちは、迷宮の奥で、一つの石像を発見した。
その石像は、まるで、俺たちを待っていたかのように、静かに佇んでいる。
「……あれが、伝説の剣か?」
アルベルトが、息をのんだ。
石像の腕には、一本の剣が握られていた。その剣は、まるで、夜空の星を閉じ込めたかのように、青い光を放っている。
「……ああ。あれが、伝説の剣だ」
俺は、そう言って、その剣に向かって、歩き出した。
俺は、その剣を、この手で掴み、魔王を倒す。
俺は、そう、心に誓った。
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